「WWA」2000年代初期を支えた自作ゲームツールの巨頭

2019年6月10日

WWAの公式。チュートリアルであり、ここから様々な世界へと旅立てる

皆さんは『World Wide Adventure』こと略称『WWA』というブラウザゲームをご存じだろうか。

キャラバンサークル」が完全無料で運営・配布しているゲームで、平成初期のネットを代表するゲームの一つだろう。

そのカスタマイズの自由度・誰でも簡単に作れるお手軽さから、ユーザー数は爆発的に伸び、公式コミュニティも相まってWWAの世界はネット上に広がっていった。

今回はそんなWWAの魅力について語りたいと思う。

WWAとは? 平成初期を代表する自作ゲームツール

WWAの制作ツール。無料配布されており、誰でも直観的に簡単に作成できる

本作はユーザーが好きなようにマップやクエスト、ゲーム内容を作成することができ、また容易にそれをネット上にアップロードすることができる。

例えば、有名なのはマップ内を駆け回り、謎解きをしながら宝探しをするようなゲームだろう。

上手く工夫すればRPGゲームも作成することが可能となっている。

マップやキャラ等の素材も全て手作りすることができたので、一つ一つのWWAが独立した世界観を持っていたのだ。

簡単であるがゆえに極限まで高められた世界観と工夫

WWAは作るのもプレイするのも簡単である。ゆえにルールには制約や限界があり、多くの場合は宝探しアドベンチャーのようなゲームが大半を占めていた。

ヒントを元に新しいヒントを探したり、各地に散らばる宝を見つけたりなどといったゲームである。

WWAアクエリアス
名作AQUARIUS。宝探し系の元祖的存在で、海のステージはとても美しい

そんな中、綿密な計算のもと、特定の順番で敵を倒すことで正解のルートまで辿り着けるといったRPGゲームを作成する人が現れた。

もちろんそれだけでなく、イベント床を利用したランダム要素や、プレイヤーが選択できる要素など、画期的な仕組みがふんだんに組み込まれていたのだ。

自分でも似たようなRPGゲームを作ろうとしてみたが存外に難しかった記憶がある。

また、WWAは素材もすべて手作りすることができる。

ゆえに、圧倒的なWWAとは思えないような世界観を構築するユーザーも多かった。

Fairy Tale Modernism。故郷を旅だった仲間を探す妖精の物語
その圧倒的世界観はWWAの域を超えており、世界に一気に飲み込まれる

WWAにはルールやクリア目的がなく、それらもユーザーが創作するので、まるで絵本を読んでいるかのようにストーリーが進展していく仕掛けを作成する作成者も居た。

こうしたシステムの限界に挑戦した作品群はどれも美しかったし、限られた中で己を精一杯表現しようという様は、当時のネットを体現していたようにも思う。

平成初期のインターネットはものつくり社会だった

いきなり脱線しているように見えるが列記としたWWAの魅力の話である。

これは今でもそうであると言えるので、当時はこうだったとは言いづらいのであるが、平成初期にはTwitterやPixivといった個人のスペースともいえる場所がなかった。

ゆえに、自らメモ帳を開き、HTMLタグを直接打ち込み、レンタルサーバーを借り、自分たちの家ともいえる場所を作っていたのである。

そうして建てた自分の家である個人サイトに、絵や小説といった自らの作品をアップロードして披露していたのだ。

そうした時代であったため、何かを作って共有しようというユーザーの割合が多かったようにも思う。

WWAはそうした時代にすこぶるマッチしたゲームだった。

色々な創作物があった中、ゲームは箱庭諸島やFFAといったCGIゲームが主流で、プログラミングに精通している必要があった。

そんな中、WWAでの制作は非常に簡単であり、当時中学生だった私でも難なく作成することができた。

そうして作成したゲームを、友人らやネットの向こう側に居る人達に披露しあうということを毎日のように行っていたのだ。

当時はなぜか、自分たちで作れるツールを探しては作り、そして遊び倒すを繰り返していた。

「RPGツクール」や「スーパー正男」、難しいところならば「CGI」「FLASH」などを用いた様々な作品がネット上で披露されていたのを覚えている。

WWAはそうしたネット時代の象徴の一つだったように思う。

広がるWWAのネットワークはもう一つのインターネットだった

WWAのゲート
WWAゲート。公式から代表的なユーザー作成WWAへのリンクが張られていた

WWAは「ゲート」という独自のシステムを持ち、なんとWWA内から別のページに飛ぶことができるのである。

言ってしまえば別ページへのリンクなのであるが、これが画期的だった。

様々なホームページへのリンクを張ることでリンク集のような使い方をすることができ、飛んだ先のWWAからまた違うWWAと言うように、WWAが独自のインターネットコミュニティを形成できる仕組みが盛り込まれていたのである。

この仕組みは様々な応用ができ、例えばゲームブックのように選択して飛んだ先に別のWWAを用意し、世界を渡り歩くようなゲームを作っている人も居た。

そのほか、長編をチャプター1・チャプター2のように別のWWAとして作成しておき、チャプター1をクリアした先にチャプター2のゲートを作成しておくことで大長編を作成するといった応用もされていた。

さらにクリア後のご褒美として隠しページに飛ぶといった仕組みを作成する人も居たりなど、多種多様な使い方があったのである。

このゲートシステムの他に、当時のインターネットでは定番である同盟リンクのようなものや専用の掲示板などがあり、WWAユーザー達がさまざまなWWA世界へと旅立つことができる仕組みが確立されていたのである。

WWAの後継「WWA Wing」とまさかのSwitch進出「WWA COLLECTION」

『WWA』はJavaアプレットで動いてる。しかし、現在ではWebブラウザのサポートが廃止されてしまっている。

そこで有志達が集まり、WWAをHTML5で動くように作り直す「WWA Wing」が発足し、見事復活を遂げた。

復活しただけでなく、タブレットやスマートフォンにも対応するにまで至っているのはファンから愛されている証拠だろう。

そして2018年12月20日、WWAの名作を詰め合わせたニンテンドーswitch用のソフト『WWA COLLECTION』が発売されたのだ。

かつての2000年代初期を支えたプラウザゲームが最新ゲームハードで復活を遂げたのは、この作品がいかに愛され続けた作品であるかを物語っていると言える。

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