ソニックジャムで初めて3D空間を自由に動き回るソニックを操作したときの感動を今でも覚えている。試遊台でソニックアドベンチャーを初めて見たとき未来がそこにあった。
今作はそんな未来が今となった『ソニックフロンティア』をレビューしていく。
実はメーカー様よりPRの申し出があったのだが、発売後であったし、今すぐにでもやりたいので断って自腹で購入した経緯がある。もちろん今作は100%クリア済み。
広大な箱庭で駆ける音速
『ソニックフロンティア』はオープンワールドというより、厳密には超広大な箱庭というイメージが近い。
一歩進めばそこには玩具が大量に転がっている。プレイヤーはそれらを好きな順番で好きなように遊んでいい。そうしているうちに目標を達成しているだろうから。
上記ツイート内では、同じ道を3つのルートで進むショート動画を公開しているのでぜひTwitterに飛んで見てほしい。
このように遊び場は徹底的にデザインされており、遊べば遊ぶほど新たな発見が見えてくるようになっている。
見えるすべての景色はソニックの庭でしかない。自由に駆けまわればいい。そんな言葉が画面から伝わってくるようだった。
圧倒的なフィールドをソニックで駆けまわる気持ちよさ。これはまさに『ソニックフロンティア』に求めていたものだ。
しいて難点を挙げるとすれば、レール的な移動を強いられる場所が多く、進みたい方向とは異なる方向に進まざるをえなくなる場面が多いと感じた。もちろんギミックを無視して進んでもいいのだが、特定の場所へはギミックを駆使する必要があり、運だよりで進むことになる場合がある。
ところで、『ソニックフロンティア』にはファストトラベルがあるのだが、フィールドごとに後半にならないと解禁されない。のだが、ソニックが本気で走るとフィールドの端から端まで一瞬で辿り着いてしまう。ゆえに正直ファストトラベルの解禁が遅いことはまったく気にならなかった。
これはフィールドが狭い訳ではなく、むしろ広いぐらいなのだが、ソニックが速すぎるのである。なのでこの大量のギミックは、ソニックという音速の存在を操作してもゲームを破壊せず、プレイヤーにフィールドを堪能してもらうために産み出されたのかもしれない。
ギミック自体はどれもこれも爽快感があり、そこに窮屈さは感じられず、むしろ世界を自由に遊び尽くすソニックの楽しさを体験できる。
本作は5つの島で構成される。
最初の島を攻略し、残りの島の存在が明らかになったとき、思わず声が出たほどにボリュームがあった。非常に密度が濃い体験なので、正直遊び疲れが頻繁に発生する。
だが、1日置くとまた手に取りたくなる魔力が本作にはある。続けて何時間もやり続けるようなゲームではなく、遊びたいときにおもちゃ箱をひっくり返して遊ぶようなゲームなのかもしれない。
謎解き要素は最初ちょっと存在意義が分からなかったというのが正直なところであるが、実際やってみるとちょうどよい息抜きになる。
また、実質探索すべき島は4つで、1つはストーリー上の息抜き的ステージとなっている。ゆえに終わってみれば「遊び尽くした……!」と言えるボリュームと内容で満足感があった。
ボス戦はハードにロックに
『ソニックフロンティア』ではステージ毎の大ボスに加え、フィールドボスが存在する。
彼らはフィールドを自由に闊歩しており、近づくとエンカウントし様々なギミック戦闘を仕掛けてくる。もちろん戦う逃げるは自由なので、エンカウント後も逃げられるし、相手の名乗りが発生する前に攻撃をしかけることも可能だ。
たとえば私がお気に入りのスクイッドは背中に飛び乗ると戦闘開始。
ソニックの音速に追いつけないものは居ないのでその背中を駆り超音速で本体を吹っ飛ばしに行くのだ。
上記ツイート内では手加減しているが、もっと早く追いつくこともできるし、攻撃力を高めれば瞬殺していくこともできる。
ボス戦は基本的にギミックが中心となる。が、大迫力のボス戦はやはり圧倒的にカッコイイ。個人的に最序盤に居た体を登っていく系のボスが好きなので、後半にもう少しバリエーションが欲しかったとも思う。
最終ステージではボスのバリエーションが尽きかけていたように感じる。同時に釣りという戦闘をかっとばせる要素が用意されていたのは狙っていたのだろうか。
大ボスとなる巨神との闘いはボーカルが入ったノリノリなBGMと共に繰り広げられる。
圧倒的な巨躯に対して音速で駆け抜けるソニックの図は本当にワクワクする。ただスーパーソニックまでが短いので、ここはもうちょっと楽しみたかったポイント。
圧倒的なまでに迫力のあるカメラワークで繰り広げられる戦いに胸が躍らざるをえない。
近代ソニックではお馴染みとなったスーパーソニックによる大ボス戦。はっきり言ってスーパーソニックが強すぎるので、最高難易度でも負けることはないだろう。
公式で第一の巨神戦のBGMが公開されている。
半QTEでの戦闘。これもシリーズではほぼお馴染みである。ここまで来たご褒美ということで、最高にロックな音楽と最強のスーパーソニックと共にぜひボッコボコにしてやってほしい。
過去最強レベルの強さを誇るスーパーソニックで巨神を圧倒する様は爽快である。
電脳空間はいつものソニック
『ソニックフロンティア』では「電脳空間」と言われるステージで遊ぶことができる。
見ての通り、いつものソニック。
まぁこれが楽しい。非常に面白い。
私は3DソニックではWiiの「ソニックと秘密のリング」が好きなのだが、あのゲームをプレイしたときに感じた圧倒的な爽快感をその身に感じることができた。
電脳空間はあくまで本作を構成する要素の1つなので、スキルや成長要素が存在しない。ゆえに最初からMAXスピードで楽しめる。
だが、面白いからこそ不満もある。
ステージ背景の種類が少ない。本作の特性上、過去作のパロディやさまざまなギミックが登場して非常にワクワクさせられるのだが、いかんせんステージ背景が似通っているので、あと幾ばくかの種類が欲しかったと感じる。
これは電脳空間がとても面白かったがゆえに感じる不満だが、あくまでメインではないので仕方がないのかもしれない。
ちなみにストーリークリア後は電脳空間のみを自由に選択して楽しめるアーケードモードが解禁されるので、好きなだけソニックを堪能できる。
ストーリーはちょっぴり大人でほろ苦く
ポストアポカリプスということで若干の不安があったが、いつも通りの始まり方で安心。
電脳空間に囚われた仲間を探して解放していくことも本作の目的の1つ。その中で仲間達とのサイドストーリーが展開していく。
エミー・ナックルズ・テイルス、いつもの仲間達との会話はいつもよりほろ苦く、ちょっぴり大人。彼らもまた先に進むときが来たのかもしれない。
いつものノリで、だがいつもとは違う少ししんみりとした彼らの会話。それは物語に深みを出すだけでなく、彼らの今後を予感させ、その先を観たいと思わせる内容だった。
本作は集大成の1つとして作られている感があり、過去作の話がよく出てくるが、未プレイでもそんなことがあったんだなぐらいに聞き流す程度で問題無い。かなり懐かしいシーンも出てくるのでファンには嬉しい。
本作で登場する「セージ」。エッグマンが産み出したAIであるが、彼女とエッグマンの関係も実にいい。
エッグマンはいつものエッグマンで安心するし、憎みきれない本物の天才である彼の気持ちいい性格を堪能することができる。
そんなエッグマンにさらなる深みが増したなと思えたのがセージだった。
ミニゲームで手に入る音声ダイアリーはフルボイスで、エッグマンの内面を深く推し量れる内容となっているのでぜひすべて見てほしい。
心を落ち着かせるBGMをバックに流れる彼の独白。それはしっとりとしていて、コーヒーでも入れてゆっくりと聴きたくなるような心地良ささえある。私はこのような登場人物の本質を知れるような思慮深い文書を読むのが好きだ。
私が思うに、ソニックフロンティアの本当の主役は彼であったのではないだろうか。
公式Youtubeチャンネルではプロローグとなるアニメや動画が多数公開されているので、気になった方はぜひ覗いてみてほしい。
総評
恐らくクリアは100%でも30時間程度で済む。ストーリーだけをさっさとクリアしようとすればもう少し早い。個人的には本作はこれでピッタリというボリュームだったように感じる。
心配していたストーリーはしっかりと展開されていたし、電脳空間・フィールド共に申し分なく楽しめた。広大なフィールドをソニックと共に駆る爽快感は唯一無二。
本作ではポストアポカリプスが題材だったので、次作ではソニックアドベンチャーのように活きた街を駆け回ってみたい。
『ソニックフロンティア』が少しだけ前に進むための物語であったように、ソニックシリーズもここからさらに前に進んでいくのかも。