マリオカート64。無駄と余白から産まれたゲームの面白さ【レビュー】

2019年8月24日

マリオカート64

© Nintendo

皆さんはマリオカート64をプレイしたことはあるだろうか。

本作はNINTENDO64のソフトとして1996年12月14日に発売された。

かの有名なマリオカートシリーズの第2作目であり、NINTENDO64では国内出荷数が最も多いソフトである。

私はこのソフトに大層ハマり、かなり特殊な遊び方をし続けた。

そんな遊び方ができるこのソフトの魅力について語る。

マリオカートとは? 稀代のはちゃめちゃバトルレーシングゲーム

もはやマリオカートシリーズについて多く語る必要はないと思うが、改めて簡単な説明からしていこう。

マリオカートは名前の通り、マリオシリーズのキャラクターが最大8人で所せましとカートレースをするゲームだ。

本シリーズの特徴として、コース上に設置されたアイテムを取得することで相手を妨害することができる。

これによって多少の腕前による差は関係なくなり、さらに下位から1位のみを狙い撃つアイテムの存在によって、より戦略的なレース展開を求められる。

ちなみにマリオカートの登場により、マリオカートフォロワーとも言うべきアイテムを使って相手を妨害する系のレースゲームが多く登場することになった。

最も無駄が多く、最も困難で、最もムチャクチャなマリオカート

本作はマリオカートシリーズの中においても、様々な点で凶悪な作品だ。

ぜひともその魅力について知ってほしい。

現代のマリオカートからは想像を絶するほどのハチャメチャぶりなのだ。

落下時間は永久の如く、ショートカットは瞬きの如し

本作が凶悪足らしめる所以は、落下の仕様とショートカットだろう。

例えば、コース外に落下したとき、画面外にまで行ってからコース内に復帰するのだが、復帰までが異常に長い

例え1位でも、一度落下したら最下位からスタートなんてことがざらにある。

特に最終ステージであるレインボーロードは異常で、落下すると画面外に到達するまで10秒近く落下し続けることになる。

最終ラップで落ちようものならほぼ絶望的である。

そしてこの仕様を悪用したショートカットが本作には存在する。

例えば「レインボーロード」は先ほど述べたように凄まじい高低差が存在する。

それを利用して、スタート直後の急な坂道をコース外に向かってジャンプするのだ。

すると、遥か先にあるコースに向かって10秒以上に渡ってジャンプしたのち、着地することができる。

これによって失敗すれば一発アウトだが、成功すれば3分の1以上をショートカットできるという超荒業が可能となる。

本作を反省してか、これ以降のマリオカートでは落下すると即座に画面外判定となり、コースに復帰されるようになった。

ちなみに、このようなショートカットは他にも様々なものがある。

最もヤバいのは「ワリオスタジアム」のショートカットだろう。

まず、スタート直後の段差を利用して壁を飛び越え、真横のレーンへと移動する。

さらにもう一度壁へとぶつかりジャンプすることで、なんとスタート地点の前、つまりゴールへと戻ってくることができる。

これを利用することで数分かかるレースを数秒で終わらせることができるのだ。

後半部分の難易度は最上級だが、前半は比較的簡単であるし失敗してもリスクは薄く、リターンは絶大なため、知らなければまず勝てないクソ技であった。

本作はそのような知らなければ絶対勝てないようなバグまがいのショートカットが数多く存在していた。

無駄すぎるコース作りから産まれる無限大の遊び方

本作を本作たらしめ、私が本作を死ぬほど遊び倒した理由が「コースの無駄」だ。

もっとも顕著な例で行くと「ピーチサーキット」だろう。

ピーチサーキットのコースは、ピーチ城の周りに設けられたコースを走るもので、ピーチ城は正面を通過するだけである。

しかし、コースの途中にピーチ城へと続く道があり、そちらに入るとピーチ城の正面まで行くことができる。

無論ここはコース外であり、どこへも繋がってない行き止まりであるし、マップ上でも表示されることはない。

完全に無駄な作りなのだが、そういった遊び心は冒険心をくすぐられとてもワクワクした。

そしてバトルモードが他にあるにも関わらず、ピーチ城前にアイテムを持ち寄ってぶつけあったり、独自ルールで鬼ごっこをして楽しむなどして楽しんでいた。

少なくともピーチ城に関しては「スーパーマリオ64」の3Dモデルをそのまま使いまわした結果であると思うが、逆に「スーパーマリオ64」ではピーチ城の外には出られなかったため、そういった面でもマリオカート64は世界の広さを感じられたのだ。

バトルコースも無駄に広く要塞ゲーと化した

マリオカートシリーズではお馴染みのモードで、箱庭上のステージを自由に走り回り、アイテムを相手にぶつけて風船を割りあうというモードがある。

全て専用ステージなのだが、中でも「ダブルデッキ」は異常な広さを誇る。

面としても広いのだが、縦にも広い

四角いステージ上に、4つの4階建ての四角い建物があり、それぞれの建物は細い通路で繋がっている。

最大4人対戦のステージとしてはあまりにも広すぎるので、それぞれが建物に籠って設置系アイテムを置きまくり、要塞とするなどして遊んだりした。

今の任天堂では考えられないマップの適当なスケール感であるが、それゆえに遊びの幅も広かったのだ。

まとめ:無駄が世界を広げる

以上の通り、マリオカート64は初の3Dマリオカートだけあって、調整や作りがゆるく理不尽な難易度や、めちゃくちゃなショートカットを産みだしていた。

しかしながら、それと同時に余白のあるゲームデザインはプレイヤーの想像を刺激し、様々な挑戦をさせるに至った。

私は常々こういった、ゲームにとって必要がない無駄な部分こそが面白いと感じている。

製作者の思惑とは外れることになると思うし、それが正しいかは分からないが、無駄という名の余白は、ゲームにルールという枠組み以上の、画面の向こうに無限の世界が広がっていると感じることができるのだ。

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