今回はゼルダシリーズ通して屈指の名作と言われる「ゼルダの伝説 夢をみる島」について語っていく。
本作は任天堂によって1993年6月6日にゲームボーイで発売され、のちに新要素を加えた「ゼルダの伝説 夢をみる島DX(デラックス)」を1998年12月12日にゲームボーイカラーで発売している。
本稿ではDX版をベースにして語っていく。
※本編における重大なネタバレ全開です。注意してください。
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その儚いストーリーは今もなおプレイヤーの心を打ち続ける
本作「夢をみる島」と言えば、有名なのはその設定と世界観だろう。
本作はスーファミで発売された「神々のトライフォース」の続編にあたり、旅に出た主人公リンクが遭難してしまい、島に漂着するところから始まる。
島から出るには「風のさかな」を起こす必要があり、それがゲームの最終目的となる。
そしてそのためにリンクは「風のさかな」を起こす鍵となる8つの「セイレーンの楽器」を集めることになるのだ。
ここまで見るといつものダンジョンクリア型のゼルダに見えるだろう。
しかし、ゲームの舞台となるコホリント島は、島の神である「風のさかな」の見ている「夢」であることが判明する。
島だけでなく、魔物も、島の住人達も、遭難したリンクを助け、空を観ながら夢を語ってくれたマリンも全てが夢でしかなく、風のさかなを起こすということは、それら全てが消滅することを意味していた。
住人達が消えない方法が見つかる訳でもなく、クリアと同時に全てのものが消えてしまう。
真EDでは多少の救いがあるものの、そのあまりにも悲しく儚いストーリーに、当時のプレイヤーは衝撃と感銘を受けたことだろう。
この設定は後の「ムジュラの仮面」におけるタルミナの設定と良く似ており、影響を与えたのではないかと推測される。
ストーリーがゲーム上に強く表現されたゼルダ
ゼルダの伝説は後のシリーズにおいても、亡くなったものが助かったりする都合の良い展開が起きることは少ない。
むしろ、何かを成し遂げるために誰かが犠牲になってしまうという話が多かったりする。
これは有名な「時のオカリナ」における賢者達であったり、「トワイライトプリンセス」の影の女王であったり、「ブレスオブザワイルド」の英傑達であったり、他様々な作品において皆が助かるといった展開を許さない。
「夢をみる島」の前作「神々のトライフォース」においても犠牲者は出ているし、さらにその前の「リンクの冒険」のころからゼルダシリーズはダークなストーリー性を持っていた。
しかしながら、それらは設定や世界観として表現されていたことに対し、今作からは特にストーリーの表面部に推しだされている。
そのこともあり、本作は異色作であると同時に、ストーリー性を推しだしたゼルダとして知られている。
個性豊かなNPCが彩るゼルダワールドの原点
「夢をみる島」はストーリーだけではない。NPCも大変魅力的だ。
ヒロイン枠であるマリンは、前作のゼルダ姫がちょこっと会話する程度だけだったことに対し、2人で海岸で話し合う専用のイベントや、マリンを連れてキャッチャーゲームに連れて行ったりオカリナを吹いたときなどにだけ起こる専用セリフやイベントなど、数多くの触れ合い要素が用意されている。
また、ヒロイン以外のNPCにタリンというキャラクターが居る。こちらはキノコを食べて狸になってしまったり、蜂蜜狙いで蜂の巣を突いて追い回されたりと大変コミカルなキャラクターになっている。
こちらのマリンとタリンは、明らかに「時のオカリナ」のマロンとタロンの元となったキャラクターだ。
また、村でボールを投げ合って遊んでいる子供たちは、マリンと居るリンクを茶化しつつも「こどもだから なんのことか わからないよ」と煙に巻く。これまた性格・養子は違うが、時のオカリナでボールを投げ合い2人の男性の元となっているキャラクターだろう。
そのほか、今作からリンクに助言を与えるフクロウや、電話越しからしか話さず、リンクにヒントを教えてくれる「うるりらじいさん」など、非常にコミカルなキャラクターが数多く存在する。
前作「神々のトライフォース」でもNPCは居たが、わりかしあっさりしたもので、ここまで特徴的なものは少なかった。
逆に、今作以降のゼルダでは時のオカリナを筆頭に、数多くの特徴的なキャラクター達が通常するようになる。
まさに、ゼルダの伝説の世界観を決定づける作品となったと言えるかもしれない。
カービィやヨッシー!? 数多くのコラボキャラクター
本作はなぜか同社のコラボキャラクターが数多く登場する。
例えばヨッシーは人形と登場し、「カエルの為に鐘は鳴る」のリチャード王子や「シムシティ」のドクターライト「スーパーマリオUSA」のラスボスマムーまでもがNPCとして登場する。
これだけでもごった煮状態で非常にカオスなのだが、敵キャラクターとしてマリオでお馴染みのクリボーやテレサなど、数多くのキャラクターが友情出演しているのだ。
もちろんクリボーは踏んで倒せるというファンサービスも徹底している。
そしてなんと、あのカービィが敵キャラクターとして登場するのだ。
見た目はどことなくパチもんくさいうえ、ダンジョンでしれっと出てくるため驚いたプレイヤーは数多いだろう。
もはやこれはゼルダなのか何なのか分からないというぐらいにはコラボキャラクターが多く出てくるため非常に楽しい。
これ以降このようなゼルダ作品は一切登場していない。
当時は携帯ゲーム機版はお祭りゲームとして作られることが多かったため、本作もそのようなノリで作ったのかもしれない。
数々の詰め込み過ぎなミニゲーム
本作はミニゲームがとてもユニークだ。
前作「神々のトライフォース」でもミニゲームはあったがその比ではない。
神々のトライフォースでは的当てゲームであったり、迷路であったり、既存の操作を転用しただけのものばかりだった。
しかし、今作「夢をみる島」では、クレーンゲームや釣り、急流すべりなど、このためだけに作られた専用の画面・専用の操作方法でミニゲームを楽しむことができる。
これは非常に新鮮な体験であり、当時はめちゃくちゃワクワクしやり込んだ。
このユニークなミニゲームに関しても、時のオカリナの釣りや、ふしぎの木の実のマイトパンチジムなど、今後の作品に影響を与えているように思える。
また、ミニゲームとは少し違うが、アイテムをどんどん交換していく通称「わらしべイベント」も本作が初めである。
ジャンプ! 盾はじき! 無限ファイア!
ゼルダと言えば数々のアイテムを用いたアクションが特徴的だ。
本作でも特徴なアイテムが数々登場する。
中でも特に衝撃的だったのは「ロックちょうのハネ」だ。
なんと、見下ろし型視点のゼルダで任意にジャンプができるようになるのだ。
のちのゼルダではいくつか採用される作品があるが、当時はとても衝撃的だった。
しかもなんと今作では見おろし視点だけでなく、横向き画面にもなるのである。
これは非常に興奮した。ジャンプ切りもできるし、クリボーをジャンプで踏みつけて倒すというマリオみたいなこともできるのだ。
フィールドをただひたすらジャンプして駆け回るだけでも楽しいのに、本作では2つのアイテムを同時使用できるため、ペガサスのくつと組み合わせてダッシュジャンプというアクションも可能なのだ。
さらに、本作では盾もアイテムとして装備でき、任意に構えることができる。
神々のトライフォースと比べ、圧倒的なアクションの広がりに興奮が覚めることは無かった。
また、今作では終盤であるが火炎弾を飛ばせる強力なマジックロッドというアイテムが手に入る。
前作でも炎と氷のマジックロッドが登場したが、魔法ゲージの存在により使用には制限があった。
本作では魔法ゲージが存在しないため、前作でできなかった無限遠距離攻撃を好きなだけぶん回すことができるのだ。
こういった、様々なユニークなアイテム達は間違いなく本作「夢をみる島」の大きな魅力の一つだろう。
まとめ:携帯機でありながら挑戦的で、シリーズの礎を作った作品
本作はよく異質な作品と語られることが多い。
確かにそれは事実だと思うが、同時に、この後に発売されるゼルダのベースとなる部分も数多く存在している。
特にこのあと「時のオカリナ」や「ムジュラの仮面」をプレイした人にとっては、多くの既視感を覚えたことだろう。
携帯機であるがゆえに挑戦的で、ゼルダの全てが詰まっていると思われるほどに豪華な本作。
ゼルダ好きでもし未プレイな方が居るなら、ぜひとも一度プレイしてみてほしい。