最高の旅路だった。
2022年2月25日にフロム・ソフトウェアより発売された本作『ELDEN RING(エルデンリング)』。
半神達を屠りエルデの王を目指す物語を、実に1ヵ月で200時間もたっぷり楽しんでしまったのでレビューしていく。
Contents
最高の戦闘システムで探索できるオープンワールド
本作『ELDEN RING(エルデンリング)』は明確に同社のデモンズソウルやダークソウルと言ったいわゆるソウル系のシステムを受け継いでいる。
簡単に言ってしまうと、敵の攻撃を盾で受けたりかわしたりしながら剣や斧、ハンマーやレイピアなど好きな武器で戦っていくという一般的なアクションゲームなのであるが、私はこの戦闘システムこそがソウル系最大の魅力であると考えている。
敵味方ともに敵を必ず倒すという殺意の溢れる攻撃を振りかぶり、それを盾でしっかり受けたりローリングで華麗にかわしながらこちらの必殺を叩きこむ。その一連の動作は操作するほどに洗練されていき、一見するとごり押しているかのように見えるほどにサクサクと敵を倒していくことも可能となる。地に足がついた戦闘でありながら爽快とも言える戦闘システムは他のゲームにはない至高の気持ちよさだ。
さて、本作はそんな「ソウル系の戦闘システムでMMOのようなオープンワールドの世界を自由に旅してみたいな」という願いがついに叶った作品である。
レガシーダンジョンとオープンフィールドの絶妙な融合
『エルデンリング』は2種類のフィールドで構築される。それがレガシーダンジョンとオープンフィールドである。この2つのエリアはシームレスに繋がっているため両方合わせてオープンフィールドなのであるが、明確に役割が分かれており、それがこのゲームの絶妙な面白さへと上手く昇華されている。
両者の大きな違いとして「レガシーダンジョン」エリアに入るとマウントが使えなくなる。これにより大胆すぎるショートカットや、すべての敵を無理やり引きちぎるといったことができなくなる(実際は慣れてると結構できるが)。
違いとしてはぶっちゃけそれぐらいなのであるが、フロムソフトウェアのダンジョン構築は神がかっており、時空がねじ曲がったようなワープや明らかに見た目より大きな空間などが存在しない。少し歩くたびに「ここがあそこに繋がっていたのか!」「あの空間はそのためにあったのか!」と驚嘆するほどよくできている。
なので、フロムのゲームとオープンワールドは相性が悪いと思っていたのであるが、レガシーダンジョンのおかげで繊細なレベルデザインが見事にオープンフィールドと融合しており、探索の楽しさを相乗効果で何倍にも引き上げていた。
そのレガシーダンジョン自体も表口・裏口・はたまた無理やり崖から壁からなどいろんな侵入口があったりするので、結局いつものソウルシリーズじゃないかともならない。まごうことなきオープンワールドゲームである。
大雑把になりがちなオープンワールドにおいて、どこから攻略しても破綻せず、レベルなどで無理やり制限したりせず、これほどまでに繊細なマップを作り上げ楽しませてくれることに感謝しかない。
エルデンリングってすげぇよな。最後まで冒険たっぷりだもん
『エルデンリング』の世界はどこまでも冒険に満ちている。
オープンワールドのゲームはそこそこプレイしたことがことあるが、『エルデンリング』は世界の密度がとにかく素晴らしい。
「レガシーダンジョン」と「オープンフィールド」の融合により、どこまでも飽きずに緊張感のある探索が楽しめるし、ユニークなアイテムも数多く用意されているため探索心をほどよく刺激してくれる。
プレイ中「あまり広くないなと思ったら密度が凄いな」「えっこんなに広がるの?」「えっまだこんなにあるの?」「えっあれで半分以下だったの!?」「えっえぇぇぇまっまだこんなに……!?」となんども叫んでしまった。
最終盤エリアでさすがに尻すぼみしてきたと思われたところから数々のステージを用意されたのはさすがに驚いたし、冒険がまだまだ続くことがとても嬉しかった。
また、地図にクエストマーカーが無いことも本作の大きな特徴だろう。
このことによって、いかに綺麗な世界であっても地図しか見ないということも無くなる。目的地以外は興味がないということもない。そして期待を裏切ることなく膨大な数の隠しダンジョンが用意されており、世界の隅々すべてを楽しめた。
地図を広げてここには何があるだろうかとワクワクしながら予定を立てるのは子供心に帰ったかのようである。
では、むやみやたらに広く時間のかかるゲームなのかと言えばそうではない。
実際RTAでは1時間切りや、2周目以降を数時間で駆け抜けているプレイヤーが多数いる。
しかし、1周目は多くの時間をかけたプレイヤーがほとんどだったのも事実である。
このことは『エルデンリング』がクリアだけを考えればそれほど時間はかからず、だが寄り道がとてつもなく多く、またその寄り道が圧倒的に魅力的だという事実に他ならない。事実、ストーリー上で必須となるステージやボスはかなり少ない。そのほとんどはストーリー上倒す必要がないのであるが、多くのプレイヤーは私含めてすべてのボスを倒してみたいと躍起になってしまったのだ。
多彩な装備とロールプレイング
『エルデンリング』ではユニークな装備や魔法が数多く存在する。今までのソウルシリーズと比べてもかなり多い。武器に自由につけかえできる必殺技「戦技」もまた多く、自分だけの好きな装備を見つけられるのが本当に楽しい。
個人的に、良いところであるのだが、ソウルシリーズはユニークな武器が使いづらい。
1周目はなんの変哲もないロングソードやレイピア、パイクやアックスといった武器でクリアするということが多いのが少し不満でもあった。しかし、本作では強力なユニーク戦技をもつ伝承付きの武器が数多く、しかもそういった装備は強化しやすいので気軽に試しやすく、探索しがいがあって楽しかった。
レベルもガンガン上がり、加えてステータス再振りも可能なのでとにかくビルドの幅が広い。思う存分自分のロールプレイが楽しめるのが最高だった。
ちなみに私は技術・信仰型で、大剣二刀流をメインにサブで遠距離攻撃が放てる聖大剣と盾を持ち、祈祷で補助をする魔法剣士的なロールプレイを楽しんだ。
私はこういう自由な冒険ができるゲームでは器用貧乏な型にすることが多く、今あるものをすべて使って工夫しながら旅をする冒険者プレイが好きだ。FFでは赤魔が好きで、MMOでは攻撃だけでなくいろんなことができる魔法使いを好んで使用する。
『エルデンリング』でも祈祷で音を消し偲びより、強力な魔法攻撃に耐性壁を貼り、遠くに見える敵に魔法対決を挑み、時に盾を持ち、近づけば両手に持つ二刀の大剣で戦う。囲まれれば切り札の聖剣の力を解放する。憧れた冒険がそこにあったのだ。
前述したが、エルデンリングではすべての武器が均等に強くなり、最大まで鍛えた武器は「神を殺す武器」となる。私は見た目で選んだただの「騎士大剣」を相棒として旅をして「神をも殺す騎士の大剣」まで鍛え上げ神を屠った。
Twitterではフォロワーさんが魔法等を一切使わず特大剣のみで戦うベルセルクのガッツのようなプレイを楽しんでいたり、逆に純魔術師や魔法剣士など様々な人がいて、久しぶりに2周目を楽しんでみたいと思ったりした。
褪せ人の数だけ英雄譚が存在するのだ。
ソウルシリーズではない『エルデンリング』の魅力
私も誤解していたのが、本作は「ダークソウル」で無ければ「デモンズソウル」でもない。『エルデンリング』である。
ソウルシリーズは代々基本的に一本道で、殺意たっぷりのステージを攻略していき、数多のボスを屠っていくゲームである。
だが『エルデンリング』はオープンワールドで自由なのだ。
『エルデンリング』のボスはどれも強力無比で恐ろしく強い。プレイヤーを絶望に陥れるには十二分すぎるほどに強い。
だがそんなとき立ち止まる必要はない。周りを見渡せば自由な世界が広がっている。一先ず世界を回ってきてはどうだろう。世界を見てきたあとの君ならば強敵を倒せるだけ成長しているかもしれない。
まわり道をしたくないならば、勝つための方法を考えてみてはどうだろう。いかなるボスやダンジョンであろうともプレイヤーの数だけ攻略法が存在する。
仲間を呼べる遺灰システムに始まり、強力無比な付け替え自由な戦技を駆使してもいいし、さまざまな魔術や祈祷を試してみてもいい。フィールドを利用してボスを崖下に落としてやったり、地の利を利用して一方的に攻撃を当ててもいい。
一部ボスではNPCを呼ぶこともできるし、プレイヤーの邪魔をしてくる地形や罠を逆に利用してボスを倒すこともできる。
私は実際、大剣でタイマン4割・遺灰等使用4.5割・魔法をすべて反射など搦手1割・環境利用闘法0.5割ぐらいでボスを攻略していった。何を使うかはそのときの気分で決めて、どうやって倒そうかと四苦八苦し工夫していくのはとても楽しかった。
どうしても倒せないなら他のプレイヤーに助けを呼ぶこともできる。
もちろん自分から助けにいくこともできるし、助けに行けば報酬が手に入る。元々ソウルシリーズはこのオンラインシステムで名も知らぬ人のもとに助けに行ったり助けてもらったりができるゲームである。協力プレイは他のプレイヤーによる未知の戦法や魔術・武具を見ることができるし、何より険しく厳しい世界において他プレイヤーの存在はとても頼もしい。
もちろんすべてを己の力のみで倒すこともまた自由。
心配しなくても倒すべき敵は無数に居る。
それが『エルデンリング』なのだ。
総評
フロム作品としても屈指の難易度を誇り、今までの常識が通用しない部分が多くなった本作であるが、その回答はしっかりとゲーム中に用意されている。
それでいて今までのスタイルを捨てる必要もなく、自分のストーリーを作ることができる。
そして何より、これだけ濃厚な冒険をこれだけ圧倒的なボリュームで体験できる本作のプレイは至高の時間だった。
あまりにも険しい冒険ゆえ、終盤に差し掛かるころにはさすがの私も疲れ果てていた。しかし身体は『エルデンリング』の冒険を求め、その歩みを止めることはなかった。その様はさながら亡者のようである。
そして間隔をあけず1ヵ月で200時間ものあいだ冒険に明け暮れた。
クリアした今でもあの世界に戻りたいと思ってしまうのだ。