今回は『MELTY BLOOD: TYPE LUMINA(メルティブラッド タイプルミナ)』についてレビューしていく。
本作は2002年に無印が、そして2010年に最後のバージョンアップが出されたメルブラこと「MELTY BLOOD」の完全新作である。
前作は筆者がゲームセンターで最も遊んだ作品であり、面白い格ゲーを語るうえで外すことができない青春の格闘ゲームだ。
2021年9月30日と前作から11年ぶりに引き続きフランスパンによって開発され、ディライトワークスから販売されている。
Contents
渡辺製作所の血が流れるあの頃のメルティブラッドがそこにあった
『メルティブラッド タイプルミナ』を起動し最初に見ることになるであろうオープニングムービー。これがまた素晴らしい。
よく動くドット絵がふんだんに使われたスタイリッシュで躍動感のあるムービーは、当時の格ゲー勢である筆者には見覚えがあり、馴染み深いとさえ感じさせる。それでいて明らかに当時よりパワーアップした映像美はメルティブラッドの新作が出たんだなという実感をより確実なものにさせるのである。
宮本ひよりさんにより歌われる「Stack Black」がまたいい味を出しており、映像と相まってインディーズらしい挑戦的な野性味を感じさせる。当時のかっこよかったメルティブラッドはそのまま現代により強くよりさらにかっこよく蘇ったのだ。
自由にフィールドを飛び翔けるメルティブラッド
懸念があった。
メルティブラッドはその軽快な操作性、フィールドを自由に駆け回ることができる機動性、ステージの広さなどなど、他の格ゲーにはない楽しさが詰まった格闘ゲームだ。
ドット絵が一新された今作でその魅力を引き出すことができているのか?
この懸念はまったく無用。本作は間違いなくメルティブラッドである。
懸念の1つであったカットインも実際にやってみるとテンポがとてもよくゲームの進行を一切邪魔しない。むしろ分かりやすくなったと言えるほどである。
旧作の良さを引き継いだメルティブラットの系譜がここにある。
また同時に、筆者は最初の数日はこのゲームの正体が掴めなかった。
「ラピッドビート」を中心とした新たな基本システムが強すぎたのである。
そして理解を深めるためにさらに2週間やり込んだ結果、システムへの理解が深まるたびに奥が深く、従来のメルブラでありながら新しいシステムを搭載し、それらを駆使して戦うことが求められる正にメルティブラッドの正統進化系が今作であることが理解できた。
格ゲー初心者救済システムの完成系
格闘ゲーム永遠の課題、初心者と上級者の格差。
『メルティブラッド タイプルミナ』 においてそれは1つの完成系へと到達したと言っても過言ではない。
コンボアシストの究極「ラピッドビート」
その1つが「ラピッドビート」である。
ラビッドビートは同じボタンを連続して押すことで連続コンボとなるシステムなのであるが、これが類を見ないほど強力無比なシステムとなっている。
このような連打でコンボが出るといったシステムはあらゆる格闘ゲームが初心者救済を謳い挑戦してきたシステムだ。だが、実情は初心者救済とは遠く乖離し、結局難しいコンボをしなければ話にならなかったり、コンボパーツの一部としてしか使われなかったりするのが実情であった。
だが「ラピッドビート」は違う。恐ろしく強力無比なシステムでTwitterでも歴戦の格闘ゲーマー達が困惑の声を挙げることになったほどである。
ラピッドビートには次の特徴がある。
- 同じボタン(A・B・Cのどれか)を2回以上連続で押して発動
- 2段目はラピッドビード専用の攻撃モーション
- 2段目はヒットすると相手を大きく引き込む
- 3段目は打ち上げとなりエリアルコンボになる
- 空中では同じボタンを連続で押すと3段目が投げ〆となる
- 空中では2段目をジャンプキャンセルできる
要約すると、いずれかの攻撃がヒットすれば地上であろうが空中であろうが、地上拾いであろうが、カウンターであろうが、無理矢理相手を引き込んでエリアルに繋げてさらにフィニッシュまで決めてくれるのである。
はっきり言ってめちゃくちゃ強い。
無論、頑張って難しいコンボをすれば多少はダメージが伸びるし、状況も良くなったりするが、1試合で見れば1コンボ差ぐらいの差しか出ない。なのでコンボを一切覚えずとも純粋に立ち回りだけで勝負が可能となっている。
じゃあ逆にやりごたえがないのでは? と思われるかもしれないが、それは間違いである。
いろんなコンボを自分で作れるし、ラピッドを使わずともコンボは可能であるし、ラピッド中にEX必殺技をキャンセルしてダメージを伸ばすこともできたりと、初心者から上級者まで奥が深いシステムとなっている。
これほど大胆で思いきった仕様を取り入れた開発陣を褒め尽くしたいし、この画期的なシステムの良さを多くの格ゲーマー、そして格闘ゲームに触れたことない人達に触れてもらいたい。
立ち回りは「ムーンスキル」が補う
従来のメルティブラッドは必殺技がボタンに対応しており、例えば同じ波動拳コマンドでもA必殺・B必殺・CのEX必殺の3つに分かれていた。
本作はそれに加え「ムーンスキル」が登場する。
これがまためちゃくちゃ強い。
これは方向キーとB・Cボタン同時押しで発動とめちゃくちゃお手軽に出る強化必殺技だ。
必殺技用とは別にムーンゲージと言われるゲージを消費して発動できる。
無敵こそないものの、発生が早く範囲も判定も強く、隙もほぼないのでゲージが溜まり次第立ち回りでガンガン使っていける。
これによって、立ち回りは「ムーンスキル」、コンボは「ラピッドビート」で完結するのである。
センスがある人なら本当にこれらだけで十二分に上位陣とも渡り合うことが可能なはずだ。
崩しや固めは「ヒート」や「シールド」豊富な拒否択を
俗に「開放」と言われるヒートシステム。
これは前作から存在し、メルティブラッドの代表的なシステムである。
必殺技ゲージが1以上溜まっていれば発動することができ、相手を吹き飛ばしたうえに発動中は黒ゲージのライフを回復することができる。
これによって強烈な固めや起き攻めはお手軽に拒否することができるし、ライフも回復し時間も止まるので逆転性が高いシステムになっている。
また本作では「シールド」と言われる全キャラが使用可能な当身がある。
前作では相手の攻撃ピッタリに発動させないと弱かったが、今作ではガードしながらボタン押しっぱなしで良くなっている。
細かいことを言うと1Fから発動可能なのであらゆる攻めを拒否することが可能となっている。
正直言って強すぎて攻めに困るのが辛く複雑なところなのだが、いかなる強力な攻撃もシールドすれば良くなるので、結果的にキャラバランスがとてつもなく良くなるという効果もあり、絶妙なバランスで成り立っているシステムだと言える。
まとめ:バランスが良くネットワークも良好な良格ゲー
良い格闘ゲームの一言である。
懐古などではなく、純粋に新作格闘ゲームとして新しい道を指し示しており、対戦バランスもロールバック方式が採用されたネットワークも良好だ。
セイバーが登場したときはさすがにコラを疑ったが、登場経緯(新作格ゲーの企画持ち込み時のボツ再利用)を知れば納得であるし、正直メルティブラッドを触りだしてからは気にならなかった。
すべての格闘ゲーマーから格闘ゲームに触れたことがない人まで受け入れる器のあるゲームなので、ぜひ興味がある人は遊んでみてもらいたい。