リィンカネこと『NieR Re[in]carnation』、実のところスルーしようかと思っていたのだが、Twitter上の盛り上がりに後押しされる形でプレイすることにした。
結果、これはレビューとして残したいと強く感じたので、ここに残すことにする。
ゲームというキャンバスに描かれたる世界を通して何を得るか
貴方は『ニーア リィンカーネーション』というゲームに何を期待するだろう。
ドラッグオンドラグーンから続くニーアというシリーズの最新作? ヨコオタロウというクリエイターの世界観? 吉田明彦氏の美麗なイラスト? 松川大地氏や齊藤陽介氏の過去の実績に裏打ちされた新作への期待? 前作も製作者も何も知らないし、ただそこに新作のソーシャルゲームがあっただけ?
様々な想いがあることだろう。
そんな中、私はこのゲームに「作品」を感じた。
まこと憶測で申し訳ないが、私はヨコオタロウ氏のゲームをプレイしたり、ヨコオ氏のTwitterや過去のインタビューなどを見るに、ゲームそのものにはそれほど執着が無いのではないだろうかと感じている。
たまたま目の前にゲームというキャンバスがあっただけで、そのキャンバスを通じて我々に世界を体験させることができればいいのではないだろうか、と。あくまで私が勝手にそう感じたというだけで、真意はまったくの逆である可能性も高いのであるが、そう感じてしまうほどに、ヨコオ氏のゲームに私は強く強く惹かれてしまう。
私が今作『ニーア リィンカーネーション』をプレイした感想はまさに、ヨコオ氏の描く作品をこの身に感じるということだった。スマートフォンという掌に収まる世界をたしかに私は全身で感じている。
妥協無く描かれる世界にのめりこんでいく
本作は後述するがソーシャルゲームとしてはとても平凡な作りだ。だが、そこで描かれる世界は非凡である。
本作のストーリーは3Dのフィールドを進んでいくことで進行する。基本的に一本道であるが、全編通して美しい3Dグラフィックで描かれる世界を旅することはソーシャルゲームではめったに見られない手法だ。
壮大な景色を眺めながら進んでいくと武器をもつ彫像に出会う。そこでは武器に記憶された物語、いわゆるウェポンストーリーを眺めることとなる。
ただ眺めるのではなく、プレイヤーがキャラクターを操作することで記憶を探るかのように物語が紡がれていく。
その世界は様々で、あらゆる人々の人生が描かれる。
そして、そのどれもが残酷で、美しい。
上記のスクリーンショットは画質が悪いのではない。物語を進めていくと様々な演出に遭遇する。それはどれもが大胆で、すべてが『ニーア リィンカーネーション』という作品を表現するために使われている。
そこに妥協はなく、この先を見たいと感じさせる力を持っている。
戦闘システムやガチャなどシステムは平凡
あえて言うが、ソーシャルゲームとしては平凡であり、やや古いぐらいである。
バトルは無駄に動かしたりスキルを任意で発動できるが、あまり戦略性はないので実質オートバトルと考えていい。チケットなしのオート周回があるのでストレスがないのは高ポイントだ。
余談だが、ストーリーボスがやたらめったに強い。下記は難関の6章をギリギリクリアしたパーティである。武器を強化するためのゲリラダンジョンはゲーム内で時間が確認できるのでしっかり参加したい。
ガチャは最高キャラクターの確率が2%であるし、レア度に応じて性能差が激しいのでリセマラをするなら絶対に星4を最低でも1人、できれば2人は欲しいところだ。
キャラ差はあまりないので気にしなくていい。A2など攻撃力のステータスが極端に高いので序盤はとても強く感じるが、後半は敵の攻撃も苛烈を極めるので戦場に長くいられない。同キャラはいれられないし、どう組んでもバランスはそれなりになるはずなので、好きなキャラで挑むといい。
本作には「メモリー」という装備があり、これはゲーム内で獲得できるのだが、強化するとランダムでサブステータスがつくというハクスラ的な要素がある。
こういうゲーム内で完結するランダム要素はソーシャルゲームでは珍しいので、やり込みがいがあると言えるだろう。
ウェポンストーリーやシューティングなどの遊び心
本作にはストーリーの他に、手に入れた武器に「ウェポンストーリー」というものが存在する。これはかつてその武器をもっていたもの、あるいは武器にまつわるもの、その謂れなど様々な物語が記載されたもので、重要な設定が見え隠れしたり、その世界を知る要素としてただのフレーバーテキストに終わらない1つの物語として過去作においても人気を博している。
ヨコオタロウ作品ではお馴染みの要素であるが、これがシリーズを通してとてつもない人気を誇り、ゲーム内に登場せず設定資料集でのみ描かれた作品ではその設定資料集が大人気になったほどだ(ゲーム内に収録されずブーイングになったともいう)。
大量に存在するすべての武器にウェポンストーリーがあるというのだから、この手のものが好きな人には垂涎ものだろう。
ところでこれを見て欲しい。
そう。シューティングゲームだ。本編とは完全に別の要素としてこういったミニゲームが用意されている。一定時間ごとにしかプレイできないが、プレイするだけでスタミナが大きく回復するので息抜きに良いだろう。
ミニゲームはシューティングの他にも用意されている。他にもゲーム内に登場するキャラクターを100回タップすると課金石を貰えるという隠し要素が発見されたり、かなりの遊び心が加えられている。
スタッフがスマホゲームというキャンバスで自由に遊んでいるというのが伝わってくる。まだまだ隠し要素はあるようなので楽しみは尽きない。
興味があるすべての人に
ヨコオ氏の作品を知る者であれば、その期待を裏切らない世界を見ることになるだろう。
そうでないものは新たな深みにハマるかもしれない。
その世界に興味があればぜひとも触れてみて欲しい。
物語としては、すこし進めていくと今までとは明らかに強さが異なるボスが存在するストーリーに行きつく。そこがこの世界を気にいるかどうかの分かれ目となるはずだ。